転職のメリットとデメリットについては、必ず把握しておく必要があります。ここでは、転職は理想を追うだけでなく現実に目を向けた記事を紹介します。

転職のメリットは比較的想像しやすいことでしょう。現在不満に感じていることが、そのまま解消され新たなステージに立つことができることです。給与アップ、症例数アップ、スキルアップ、人間関係の再構築、勤務時間の短縮、当直からの開放など、転職で得られるメリットは多いでしょう。

さらに、自分の市場価値を正しく理解できるということもあります。毎日、過酷な現場で働いている医師には、他の医療機関が自分の能力にどのくらいの年収をつけるのか気になるのではないでしょうか。同じ経歴の医師が、自分よりも良い待遇で働いていたらどう思うでしょうか。今までの医療機関では交渉できなかった不満が抑えきれなくなり、転職により一気に解消できるとなったら、それがメリットになるのです。転職エージェントと呼ばれるサービスが近年人気を集めているのは、メリットを最大限にするばかりでなく、デメリットを最小限に抑えるために代理で動いてくれるプロを、医師が必要とし始めているからでしょう。

転職のデメリットは、失敗する可能性があることです。転職をしたものの、聞いていた内容と違ったというケースが多いのです。知人の紹介などの口約束や人づてに聞き、しっかりと条件をすり合わせないまま入職してしまうと、給与が思ったより低いことや、当直を押しつけられるなどのトラブルが発生しがちです。また、転職してしまったらすぐに辞めるわけにもいかず、話が違ったとしても泣き寝入りするしかないでしょう。特に、知人の紹介などの転職は契約書を取り交わさないことが多いのが要因でしょう。

さらに、環境の変化もデメリットになります。医局を抜けて転職する場合、研究費が少なく研究自体ができなかったり、同年代の医師が減り職場でのコミュニケーションに苦労するなど、以前はできたことが失われて戸惑うことも多いでしょう。このようにならないため現職の利点もしっかり見直すことが大切です。また、円満に退局できないと医局に妙な評判を流されることがないとは限りません。転職活動自体がリスクになるということも知っておきましょう。医師の世界は狭いので、個人情報の漏洩は致命的。もし、紹介などで行った面接で個人情報が漏れてしまい、上司に転職活動をしていることを知られてしまったら、現職での立場は危うくなってしまいます。

転職の成功とは、満足度の高い転職ができたかどうかです。転職における失敗は、必要以上の時間がかかってしまうことや、転職したものの早期退職となってしまうことなどでしょう。転職先が決まりにくい要因として希望条件と現実にギャップがあることです。例えば、週5日勤務の医師が、週4日勤務に減らしても年収は増やしたいなど、条件が現実的でないと決まりにくいのは当然です。理想だけを追い求めるのではなく、現実もしっかり把握しましょう。平均より2～3割高い年収を希望する場合は、高いスキルがあって病院の経営に貢献し、マネジメントにも優れているなどの根拠がないと医療機関への交渉はほぼ不可能でしょう。

一度、病院側の求める条件に相応する働きができるのか、自身が何を提供できるかという視点を持つことが重要です。転職目的や将来的なキャリアプランが不明瞭という方は、この機会にしっかりと考えてみるのも良いでしょう。また、直前に家族に反対され転職を断念したというケースもあるので、事前に家族との意思疎通を行うことは大切です。